卸とは?卸売の仕組みと小売・商社との違い、仕入れの流れ
2026年09月08日
仕入れの打ち合わせで当たり前のように使われる「卸」という言葉。改めて意味を問われると、説明に詰まる方も少なくありません。
卸とは、生産者やメーカーから商品を仕入れ、それを一般の消費者ではなく事業者へ販売する働き、またはその事業者そのものを指します。読み方は「おろし」「おろす」で、昔から使われてきた問屋とほぼ同じ位置に立つ存在です。
この記事では、卸売の仕組みと流通の流れ、小売業や商社との違い、一次卸・二次卸といった区分、そして青果のような生鮮を業務用仕入れするときに卸をどう選ぶかまでを、実務の目線で順に整理します。
目次
卸とは何か 言葉の意味と役割を整理する
卸の読み方と漢字が持つ意味
卸の読み方は、訓読みで「おろし」「おろす」。音読みの「シャ」は日常ではほとんど使われません。
もともとは、問屋が小売業者へ商品を売り渡す行為を指す言葉でした。卸すという動詞に、事業者から事業者へ商品が渡っていく意味が含まれている点が、この言葉の出発点です。今でも小売店に卸す、飲食店へ卸すといった使い方をします。
卸売業が担う立ち位置
卸売業は、作る側と売る側の間に立ちます。
生産する人は、まとめて作ることは得意でも、全国の店へ少量ずつ届けることは難しい。逆に店側は、必要な品目を少しずつ、決まった曜日に受け取りたい。この食い違いを引き受けるのが中間流通としての卸の役割です。
具体的には、在庫を持って需給のずれを吸収し、物流をまとめて運賃と手間を圧縮し、売れ筋や産地の状況といった情報を販売先へ渡す。卸は商品を横流ししているのではなく、量と時間と情報のギャップを埋める仕事です。そう捉えると、この業態の存在理由が見えやすくなります。
メーカーから消費者までの流れ
一般的な流通は、次のように整理できます。
メーカー・生産者 → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者
青果の場合は、ここに産地の出荷団体や卸売市場、仲卸が入り、最終的な販売先が小売店ではなく飲食店や給食施設になることも多いです。つまり卸との取引は、消費者向けの買い物とは別のBtoBの世界で、価格も数量も取引条件として決まっていきます。
卸売業と小売業・商社の違い
販売先が事業者か消費者か
卸売業と小売業を分ける一番わかりやすい線は、販売先です。
| 比較項目 | 卸売業 | 小売業 |
|---|---|---|
| 主な販売先 | 飲食店・小売業者・加工業者などの事業者 | 一般の消費者 |
| 取引単位 | ケース単位など、まとまった数量 | 1個・1袋といった少量 |
| 価格の決まり方 | 数量や条件を踏まえた相談・見積が中心 | 店頭表示価格が基本 |
| 継続性 | 定期的な受発注が前提になりやすい | 都度の購入 |
同じ商品でも、誰に売るかで求められる機能が変わります。事業者向けなら、納品日時の指定や請求のまとめ方、規格の統一といった条件が重くなるわけです。
在庫と物流を持つかどうか
次に混同されやすいのが、商社との違いです。
| 比較項目 | 卸売業 | 商社 |
|---|---|---|
| 在庫 | 自社で持つことが多い | 持たない取引も多い |
| 物流 | 配送や保管まで担うことが多い | 手配役に回ることが多い |
| 取扱商材 | 特定の分野に絞られやすい | 幅広い分野を横断することがある |
| 収益の考え方 | 売買差益(マージン)中心 | 差益に加え、仲介や投資的な収益も |
大まかにまとめれば、在庫と物流を自分で抱えるかどうかが、卸と商社を分ける目印になりやすいということです。
実務では境目が曖昧な場合もある
とはいえ、現場はきれいに線が引けません。
商社が物流子会社を通じて配送まで担うこともあれば、卸売業者が海外調達や商品企画に踏み込むこともあります。会社の名前や業種の登録だけで判断せず、どこから仕入れているか、在庫と配送をどこまで持つかを確認したほうが実態がつかめます。
卸の種類 一次卸・二次卸・その他卸の考え方
卸は一枚の層ではなく、いくつかの段階が重なっています。
- 一次卸……産地や生産者、メーカーから直接仕入れる段階。まとまった数量を扱い、産地の作柄や出荷の見通しといった情報が早く入りやすい位置です。
- 二次卸……一次卸などから仕入れ、より細かい単位で地域の販売先へ渡す段階。小口の受発注や、こまめな配送を担うことが多いです。
- 加工や企画まで担う卸……仕入れた原料を洗浄・カット・小分けし、用途に合わせた形で納品する形態。仕入れと一次処理をまとめて任せられます。
経由段階が増えると何が変わるか
段階が増えれば、それぞれの会社が保管や配送、人件費を負担するため、費用は積み上がります。仕入れ価格の面だけを見れば、上流に近いほうが有利に見えるでしょう。
ただし情報の伝わり方も変わります。産地の天候や入荷量の変化は上流ほど早くつかめますが、二次卸は少ない数量を細かく届ける機能を持っています。上流と直接取引しても、必要な数量に届かなければ話が進みません。
つまり、段階の多い・少ないだけで良し悪しは決まりません。自社が必要とする数量、納品の頻度、品目の幅を並べたうえで、どの段階の卸と組むのが合うかを見る順序が大事です。
卸売市場を通る流通と、市場を通さない流通
卸売市場と仲卸の役割
青果や水産物の流通で欠かせないのが卸売市場です。
卸売市場は卸売市場法にもとづいて開設され、規模や役割に応じて中央卸売市場と地方卸売市場に分かれます。産地から集まった荷を卸売業者が受け、それを買い付けて小分けし、飲食店や小売店の求める形に整えて売るのが仲卸の仕事です。
毎日多くの荷と買い手が一か所に集まるため、価格の目安が形成され、産地が違っても量をそろえやすい。この集める力と値を決める力が、市場の大きな機能だと言えます。市場ごとの開設状況や制度上の位置づけは、農林水産省が公表している卸売市場情報で確認できます。
市場外流通が増えている背景
一方で、市場を通さない経路も広がっています。
生産者や産地の出荷団体と、実需者が直接条件を決める相対の取引や、産地直接取引と呼ばれる形です。品種や規格を細かく指定したい、収穫から納品までの時間を短くしたい、価格の振れを抑えて年間の予算を組みたい。こうした要望が背景にあります。
経路の違いが仕入れに与える影響
経路が違えば、得られるものも変わります。
- 市場経由……品目の幅が広く、急な追加にも対応しやすい。相場の影響は受けやすい。
- 市場外の直接取引……規格や作付けの相談ができ、条件を固めやすい。反面、天候不良時の融通は取引先の調達力に左右される。
どちらが正しいという話ではなく、両方を持っておくと欠品のリスクを分散できます。市場の仲卸・産地直送・オンラインという仕入れ先ごとの比べ方は、伝統野菜の仕入れ先を種類別に整理した記事で具体的に扱っています。
青果の卸に特有の事情 相場・規格・鮮度
日々動く相場と価格の決まり方
工業製品の卸と生鮮の卸で最も違うのは、価格が固定されにくい点です。
青果の価格は、品目・時期・数量・規格の組み合わせで変わります。加えて、天候や作柄によって産地の収穫量が動くため、日ごとに水準が変わることも珍しくありません。長雨や高温で出荷が減れば値が上がり、豊作なら緩む。この揺れを前提に、いつ・どのくらいの数量を必要とするかを伝えておくことが、安定した仕入れの出発点になります。

規格・等級・サイズという言葉の意味
見積の場面でよく出てくる言葉も整理しておきます。
- 規格……箱の入り数や大きさの区分など、荷姿と品位の取り決め
- 等級……傷や形状、色づきなどによる品位の区分
- サイズ……1個あたりの大きさや重さの区分
同じ品目でも、指定する規格が違えば価格も入荷のしやすさも変わります。料理で使う部位や切り方が決まっているなら、サイズを緩める余地があるかどうかを伝えるだけで、選べる産地の幅が広がることもあります。
納品頻度とリードタイムの考え方
鮮度が価値の中心にある商品なので、保管して待つという発想が使えません。
注文からどのくらいで届くのか、締め時間は何時か、週に何回入るのか。この納品リードタイムと頻度の設計が、店側の在庫の持ち方や仕込みの段取りを左右します。数量をまとめると単価面で有利になりやすい一方、置き場と歩留まりの問題が出るため、両者の折り合いを取る必要があります。
卸の商談で出てくる用語を押さえる
商談の場では、業界の中だけで通じる言い方が飛び交います。意味を知らないまま話を合わせてしまうと、条件の取り違えにつながります。
- セリ……卸売市場で買い手が競り合って値を決める方法
- 相対……売り手と買い手が個別に交渉し、数量と価格を決める方法
- 荷姿……段ボールやコンテナなど、納品されるときの梱包の状態
- ロット……1回の取引や生産でまとめて扱う数量の単位
- 歩留まり……仕入れた重量のうち、実際に使える部分の割合
- リードタイム……発注してから納品されるまでの時間
このなかで見落とされやすいのが歩留まりです。単価が低くても、傷みや不要部分が多ければ、使える量あたりの費用はかえって高くつきます。カット品や規格の違う荷を比べるときは、箱あたりの単価ではなく、実際に使える重量あたりで並べると判断がぶれません。
荷姿も、地味に見えて現場に響く項目です。段ボールかコンテナか、1箱の重さがどれくらいかによって、検品や保管、廃棄の手間が変わります。厨房やバックヤードの広さに合うかどうかも、あらかじめ伝えておきたい条件のひとつです。
仕入れ先としての卸を選ぶときの判断軸
まず確認したい五つの観点
- 必要な数量に、季節を通して対応できるか
- 求める規格・等級・サイズを指定できるか、代替案を出せるか
- 入荷が細ったときに、産地や品目の振り替えを提案してくれるか
- 締め時間・納品曜日・配送地域が自社の運用に合うか
- 産地や作柄の情報を、事前に共有してくれるか
価格は当然の関心事ですが、欠品したときの損失や、急な変更に人手を割く負担も原価の一部です。相談のしやすさは数字に出にくい要素ですが、長く続ける取引では重く効いてきます。産地ごとの供給体制まで踏み込んだ確認点は、北海道の青果卸売業者の選び方を扱った記事で詳しく整理しています。

業種によって求める条件は変わる
飲食店なら、少量多品目と鮮度、そして日々の献立変更への追随。ホテルや宴会場なら、日によって数量が大きく振れるため、ピークに耐える調達力。給食や福祉施設なら、規格の安定と衛生面の手順、そして予算内で組める価格の見通し。仲卸や納品業者なら、量と荷姿の揃い方。食品加工業者なら、原料の均一さと歩留まり。
同じ卸を評価しても、業種が違えば合否が変わるということです。
カットや一次加工などの付帯対応
人手が集まりにくい状況が続くなかで、洗浄・皮むき・カットまで済んだ状態で受け取る選択が広がっています。厨房での下処理時間と廃棄の扱いが減り、仕込みの人員を別の工程に回せます。
卸に何をどこまで任せられるのかは、商品や時期、数量によって変わります。まず自社の工程を書き出し、外に出せる部分を切り分けてから相談すると話が早く進みます。どの形状まで対応できるかを具体的に知りたい場合は、業務用カット野菜の対応内容も参考になります。
小ロットのB2Bサイトと継続取引の使い分け
事業者向けの仕入れサイトを使えば、少ない数量でも発注できます。新メニューの試作、単発のイベント、扱いの少ない品目を試す場面では現実的な選択肢のひとつです。
ただ、毎日使う主力品目を安定して確保するとなると、数量と規格をあらかじめ共有し、産地の状況を踏まえて調整していく継続的な卸取引のほうが向いています。試すときはサイト、支えるところは継続取引、と役割を分けて考えるのが実務的です。
卸と取引を始めるまでの流れ
問い合わせの段階で伝えておくとよいこと
初めて卸へ連絡するとき、安く仕入れたいという要望だけでは話が前に進みません。
先に整理しておきたいのは、使いたい品目、想定する用途、1回あたりの数量と発注の頻度、納品してほしい地域と曜日、そして時期による増減の見込みです。用途が分かれば、卸の側から規格やサイズの代替案を出しやすくなります。
繁忙期と閑散期で数量がどのくらい変わるのかを添えておくと、年間を通して対応できる範囲も早い段階で見えてきます。
見積と条件のすり合わせ
見積は、条件が固まるほど精度が上がります。
生鮮の場合、価格は品目・時期・数量・規格の組み合わせで動くため、一枚の価格表で完結しないことが多いです。想定条件での目安を出してもらい、相場が動いたときの扱いをどう考えるかまで話しておくと、後の行き違いを防げます。
複数社に相談するときは、同じ条件を同じ言葉で伝えることが大切です。規格や荷姿がばらばらのまま金額だけを並べても、比べているものが揃っていません。
取引条件と支払いの取り決め
継続的な取引に入る前には、事務面の取り決めが必要になります。
締め時間、納品曜日、最低の発注単位、請求の締めと支払いの時期、返品や事故品の扱い、緊急時の連絡先。これらは会社ごとに異なるため、自社の運用と合うかを一つずつ確認します。新規の取引では信用の確認や書類の提出を求められる場合もあり、会社の資料をそろえておくと手続きが早く進みます。
試験的な納品から本格運用へ
条件が見えたら、まずは品目や数量を絞って試すのが現実的です。
届いた状態、歩留まり、仕込みにかかる時間、欠品が出たときの連絡の速さ。一度実際に動かしてみると、書面では分からない部分が見えてきます。そこで問題がなければ品目を広げ、合わない点があれば規格や納品頻度を調整する。段階を踏むほど、仕入れ先の切り替えに伴う現場の混乱を小さくできます。
卸売業を取り巻く変化と今後
受発注のデジタル化
電話とファクスが中心だった受発注は、専用のシステムやウェブ経由の発注に置き換わりつつあります。発注履歴が残る、伝達ミスが減る、締め時間の管理がしやすくなる、といった変化が現場に現れています。
直接取引の広がり
産地と実需者が直接つながる動きも進み、中間流通は不要という言い方をされることもあります。ただ実際には、複数産地から必要量を集める、規格を揃える、配送をまとめる、といった作業が誰かに残ります。役割が消えるのではなく、担い手や形が変わっていると見るのが妥当でしょう。
卸に求められる機能の変化
これからの卸に期待されるのは、単に商品を運ぶことより、需給の見通しを共有し、代替案を出し、用途に合う形に整える力だと考えられます。仕入れ側としては、価格の一点だけでなく、こうした機能をどれだけ持っているかを見る視点を持っておくと、判断を誤りにくくなります。
よくある質問
卸の読み方は?
訓読みで「おろし」「おろす」と読みます。音読みの「シャ」は常用漢字表には載っておらず、日常ではほとんど使いません。問屋が小売へ商品を売り渡すという意味を持つ言葉です。
卸売業と小売業はどこが違いますか
販売先が事業者か一般の消費者かという点が基本の違いです。あわせて、取引単位がまとまった数量になること、価格が表示ではなく条件に応じた相談で決まりやすいことも異なります。
卸と商社は同じものですか
在庫を持ち、物流まで担うかどうかが分かれ目になりやすいです。ただし実務では両方の性格を持つ会社も多く、名称だけでは判断できません。仕入れ元と、配送・保管の範囲を確認すると実態が見えます。
一次卸と二次卸では仕入れ価格が変わりますか
経由する段階が増えれば、その分の費用が積み上がります。一方で二次卸は小口対応やこまめな配送を担っており、単純に安い高いだけでは比べられません。自社の必要数量と納品条件に合うかどうかで見てください。
卸と直接取引するには何が必要ですか
法人または個人事業として事業を営んでいることが前提になり、そのうえで必要な数量や納品条件が相手の対応できる範囲に収まるかを確認されます。新規の取引では、信用面の確認や必要書類の提出を求められることもあります。
卸との取引に最低ロットはありますか
品目や時期、配送の条件によって変わるため、一律に決まっているものではありません。まずは必要な数量と発注の頻度を伝え、対応できる範囲を相談していく形が一般的です。
青果を卸から仕入れる場合、価格やロットはどう決まりますか
品目・時期・数量・規格などの条件で変わるため、あらかじめ一律に示せるものではありません。使う用途、必要な数量の目安、納品の頻度を伝えたうえで、条件を相談しながら決めていく形が一般的です。
北のやさい便が選ばれる理由
仕入れの担当者が困るのは、価格が分からないことよりも、この条件で本当に続けられるのかが見えないときではないでしょうか。

夏場に入荷が細って献立を差し替えた、規格が揃わず仕込みの手間が倍になった、来月の予算が読めない。こうした出来事は、どれも数字の前段にある調達の設計から生まれます。
北海道は品目が幅広く、本州とは収穫の時期がずれる産地です。だからこそ、産地の作柄や出荷の見通しを踏まえて、いつ・どの規格で・どれだけ必要かを事前に共有できるかどうかが、業務用仕入れの安定を左右します。相場が動く前提の商品だからこそ、条件を固めるのではなく、条件を話し合える相手を持っておく意味があります。
私たちは、北海道産の青果を業務用に扱う立場から、飲食店・ホテル・給食や福祉施設・仲卸・食品加工といった納品先ごとに異なる要望を伺い、産地や規格、数量、納品の頻度を一緒に組み立てていく形を大切にしています。厨房の作業時間を減らしたい場合は、カットや一次加工を含めた形での相談も可能です。取引の全体像から確認したい方は、業務用野菜の卸売・産地直送についての案内もあわせてご覧ください。
価格やロットは、品目や時期、数量によって変わります。まずは使いたい品目と用途、必要な数量の見込み、納品したい曜日や地域といった手元の条件をそのままお知らせください。実現できること、条件を変えれば可能になること、季節によって難しくなることを整理してお伝えします。

次の仕込みで迷いを減らすために、必要な規格や数量について問い合わせるところから始めてみてください。業務用仕入れについてのご相談を承っています。

「北のやさい便」は、北海道産野菜の卸売・仕入れのスペシャリスト集団です。
札幌中央卸売市場をはじめ、北海道の真狩村をはじめ、全国の農家さんとの独自のネットワークを活かし、鮮度と品質にこだわった旬の野菜情報を発信しています。
飲食店や食品加工メーカー様の「美味しい野菜を安定して届けたい」という想いに応えるため、市場の相場情報や野菜の豆知識を、現場の視点からお届けします。




