北海道のじゃがいも農家が育てる品種一覧と用途別の選び方
2026年09月11日
納品されたじゃがいもの仕上がりが前回と違う、煮込みに使ったら形が残らなかった。そんな経験から、北海道のじゃがいも農家がどんな品種を作っているのかを調べ始める仕入れ担当者は少なくありません。厨房の段取りは、いもの肉質ひとつで崩れてしまうことがあります。
結論から言えば、北海道産じゃがいもの品種は「どの料理においしいか」だけで並んでいるのではありません。品種は味の好みだけでなく、生食用・加工用・でん粉用という出口の違いによって作り分けられています。同じ畑の隣同士で、家庭の食卓に並ぶ品種と、工場でポテトチップスになる品種が育っていることも珍しくありません。
この記事では、じゃがいもの品種ごとの特徴を肉質と用途から整理し、出回り時期、規格・サイズ、仕込みの手間まで含めて、業務用じゃがいもの仕入れで品種を選び分けるときの判断材料をまとめます。
目次
北海道の農家が多品種を作り分けている理由
生食用・加工用・でん粉用という3つの出口
北海道は冷涼で日照に恵まれ、広い面積を機械で作業できることから、国内のじゃがいも生産の中心地となってきました。2024年産(令和6年産)では、全国の収穫量約226万トンのうち約187万トンが北海道産で、全国の8割を超える規模になっています。
作付の内訳を見ると、青果として店頭や飲食店に届く生食用のほか、ポテトチップスや冷凍加工に回る加工用品種、そしてでん粉の原料になるものがあります。出口が違えば、求められる性質も変わります。生食用なら見た目や食味、加工用なら形のそろいや揚げたときの色、でん粉用なら含まれるでん粉の量が重視されます。農家はこの出口を見据えて品種を決めています。
気候と作業体系が品種の選択を左右する
味だけで品種が決まらないのは、栽培する側に事情があるからです。そうか病に強いか、ジャガイモシストセンチュウへの抵抗性を持つか、収穫作業に耐える皮の丈夫さがあるか、春まで置ける貯蔵性があるか。こうした条件が、実際の作付を大きく左右します。
道が奨励する優良品種には、こうした栽培上の扱いやすさが評価されて広がったものが多くあります。品種名の裏側には、畑での手間や病害のリスクを織り込んだ判断があるわけです。用途などに応じて約50種類が作付けされていることも、北海道の公開情報から確認できます。品種ごとの特性は、北海道庁が公開しているじゃがいもの主要品種紹介で肉色や形状まで一覧になっています。
産地によって主力品種の傾向が違う
十勝は加工原料やでん粉原料の比重が高く、北見を含むオホーツク方面も加工向けの産地として知られます。一方、後志や道南では生食用の比率が高い傾向があります。同じ北海道産でも、産地が変われば手に入りやすい品種が変わる点は覚えておくと役に立ちます。産地ごとの土壌や気候がどう味に表れるかは、北海道産ジャガイモの特徴をまとめたページでも紹介しています。

生食用の定番品種と肉質の違い
粉質とは、加熱するとほろほろと崩れ、ホクホクした口当たりになる性質です。粘質はその逆で、加熱しても組織がまとまり、しっとりした食感が残ります。この軸を押さえるだけで、じゃがいもの品種選びはかなり整理できます。

| 品種 | 肉質 | 向く用途 | 出回りの傾向 |
|---|---|---|---|
| 男爵薯 | 粉質 | 粉ふきいも、コロッケ、マッシュ | 秋から春まで幅広い |
| キタアカリ | 粉質 | 蒸し、皮つき提供、ポテトサラダ | 秋から冬が中心 |
| メークイン | 粘質 | 煮込み、カレー、シチュー | 秋から春まで幅広い |
| とうや | やや粘質 | 煮物、サラダ、下ゆで | 早い時期から動く |
| ピルカ | やや粘質 | 煮込み、素揚げ | 数量は品種により限られる |
| 十勝こがね | 中間 | 煮る・揚げるの兼用 | 貯蔵性があり春先まで |
粉質で崩れやすいタイプ
男爵薯は丸みがあり、加熱するとほぐれやすいのが持ち味です。マッシュ状にする料理では扱いやすい一方、煮崩れを避けたい料理には向きません。キタアカリは肉色が濃い黄色で、粉質寄りの食感に甘みが加わります。
ただし両品種とも芽のくぼみが深めで、手むきの仕込みでは削る量が増えます。歩留まりに影響するため、量を使う現場では見落とせない点です。
粘質で煮崩れしにくいタイプ
メークインは細長い形で表面が滑らか、芽も浅いため皮むきの効率が良く、長時間の煮込みでも角が残ります。とうやも凹凸が少なく、下処理の速さで選ばれることがあります。
中間的で使い回しの利くタイプ
十勝こがねのように粉質と粘質の中間にあたる品種は、煮ても揚げても使えるため、メニューが多い厨房で採用しやすい性格を持ちます。品種数を絞りたい場合の候補になります。
ポテトチップスや冷凍向けの加工用品種
店頭ではあまり見かけないものの、作付面積として大きいのが加工用品種です。トヨシロはポテトチップス原料としてよく知られ、ワセシロは収穫時期が早い早生タイプとして扱われます。
ホッカイコガネは細長い形状でフライドポテトに向き、揚げたときに色が濃くなりにくい性質が評価されています。揚げ色は、いもに含まれる還元糖の量と関係します。糖が多いと加熱時に色づきが強く出るため、フライ加工では糖の少なさが重要になります。
でん粉原料向けにはコナフブキなどが使われ、こちらは食味よりでん粉の含有量が重視されます。加工用やでん粉用は、あらかじめ出荷先を決めた契約栽培の形で作られていることが多く、青果として自由に流通する量は限られます。加工用の品種名を指名しても青果では動かない場合があるのは、この事情によるものです。
皮色や肉色に特徴のある品種
シャドークイーンは紫の肉色、ノーザンルビーは赤みのある肉色を持ち、加熱してもある程度色が残ります。ゆでるより蒸す、あるいは素揚げにしたほうが色が抜けにくく、盛り付けの印象を変えたいときに使われます。
皮色が赤いレッドムーンは中が黄色く粘質寄り、グラウンドペチカは皮に赤紫の模様が入るのが特徴です。インカのめざめは小玉で肉色が濃く、皮つきのまま丸ごと火を通す料理と相性が良いタイプです。
こうした品種は栽培面積が大きくないため、出回る期間の幅が狭くなりがちです。通年でメニューに組み込むより、期間限定の一品として設計するほうが無理がありません。
収穫時期と貯蔵、越冬じゃがいもの扱い
北海道の収穫時期は、早い産地や早生品種でおおむね夏の終わりごろから始まり、秋にかけて本格化します。収穫後はすぐに全量が動くわけではなく、貯蔵庫に入れて順次出荷されるため、冬から春先まで供給が続きます。
低温で貯蔵するとでん粉の一部が糖に変わり、甘みを感じやすくなります。これがいわゆる越冬じゃがいもで、蒸したり焼いたりする料理では持ち味になります。反対にフライドポテトやチップスでは色が濃く出やすいため、揚げ物中心の店では時期による変化を前提に考えたほうが安全です。低温で甘みが増す仕組みそのものは、北海道の越冬野菜と甘みの関係を解説した記事で野菜全般を対象にくわしく取り上げています。
春の終わりから夏にかけては前年産の在庫が細り、品種の選択肢が狭まります。同じ用途で置き換えられる品種を二つ持っておくと、端境期にメニューを止めずに済みます。粘質の煮込み用ならメークインととうや、というように組み合わせを決めておく発想です。
業務用じゃがいもの仕入れで品種を選ぶ判断軸
加熱時間から逆算する
まず、その料理でいもに火を入れる時間を考えます。長時間煮るなら粘質寄り、短時間で仕上げてつぶすなら粉質寄り。切り方が大きいほど崩れにくくなるので、品種と切り方はセットで検討します。
規格・サイズと歩留まりの関係
| 規格 | おおよその使い方 | 現場での注意点 |
|---|---|---|
| S | 皮つき提供、丸ごと調理 | 皮むきする場合は手間と廃棄が増える |
| M | 汎用。カット全般 | サイズがそろうと仕込みが速い |
| L・2L | 皮むき、カット、マッシュ | 中心部の状態を確認したい |
品種によってS中心になりやすいもの、大玉が取りやすいものがあります。単価だけで比べるのではなく、皮むきやカットの人件費、廃棄率まで含めた総コストで見ると判断がぶれません。
仕込みを軽くしたい場合
人手が足りない現場では、芽が浅く表面が滑らかな品種を選ぶ、あるいはカット済みの状態で仕入れるという選択もあります。価格やロットは商品・時期・数量によって変わるため、用途と必要量を先に伝えて条件をすり合わせるのが現実的です。

よくある質問
北海道の農家はどのくらいの種類のじゃがいもを作っているのですか
生食用・加工用・でん粉用を合わせると、道の優良品種や以前から作られてきた品種を含めて約50種類が作付けされているとされます。ただし一戸の農家がすべてを作るわけではなく、出荷先や作業時期の分散を考えて数品種に絞って栽培するのが一般的です。
煮込み料理に向く品種はどれですか
粘質寄りで煮崩れしにくい系統が向きます。メークイン、とうや、ピルカなどが候補です。加熱時間が長い場合は切り分けを大きめにし、逆に短時間なら中間的な肉質でも形は残ります。
品種を指定して業務用に仕入れることはできますか
可能な場合はありますが、時期・数量・規格によって条件は変わります。品種名から入るより、用途と必要量、希望する時期を先に伝えたうえで、実現できる範囲を相談する形が進めやすいでしょう。
越冬じゃがいもは普通のものと何が違うのですか
低温貯蔵の過程ででん粉が糖に変わり、甘みを感じやすくなります。蒸し料理では利点になりますが、揚げ物では色づきが強く出ることがあるため、用途との相性を確認してから採用してください。
保存で気をつけることはありますか
光に当たると皮色が緑がかり、芽も伸びやすくなります。芽が出た部分は取り除いて使うのが基本です。段ボールのまま高温多湿の場所に置くと傷みが早まるため、風通しと温度に注意します。
北海道産じゃがいもの仕入れで北のやさい便が選ばれる理由
品種の知識がそろっても、実務で最後に残るのは、自分の店やラインに合う品種を、必要な量だけ、いつまで確保できるのかという問いです。ここは資料を読んで解決する部分ではなく、産地の作付状況と自社の使い方を突き合わせて詰めていく作業になります。

たとえば、煮込みが主力のメニューで年間を通して粘質寄りの品種を使いたい場合、冬から春の供給と夏の端境期をどうつなぐかを先に決めておく必要があります。皮つきで提供したいなら小玉の確保が課題になり、フライ中心なら貯蔵期間による揚げ色の変化を織り込んだ設計が求められます。用途が具体的であるほど、選ぶべき品種と規格・サイズは絞られていきます。
私たちは北海道産青果の産地とのつながりをもとに、飲食店・ホテル・給食・食品加工・仲卸など、それぞれの現場に合わせた供給の形を相談しながら組み立てています。用途ごとの考え方や納品の流れは、業務用野菜の卸売・産地直送のご案内にまとめています。仕込みの人手を軽くしたいという相談であれば、皮むきやカットの工程を外に出すという選択肢もあります。品種名がまだ固まっていない段階でも構いません。
作りたい料理、想定している数量、納品の頻度、仕込みにかけられる人手。この四つが分かれば、候補になる品種と規格の組み合わせは見えてきます。逆に、品種だけを先に決めてしまうと、時期によって手当てができず献立を組み替える手間が生じることもあります。まずは現状の使い方をそのまま伝えていただくのが、遠回りに見えて近い道です。
必要な規格や数量、希望する時期についてのご相談を承っています。じゃがいもだけでなく、同じ産地から届く他の品目とあわせた供給の組み立てについても、お気軽にお問い合わせください。

「北のやさい便」は、北海道産野菜の卸売・仕入れのスペシャリスト集団です。
札幌中央卸売市場をはじめ、北海道の真狩村をはじめ、全国の農家さんとの独自のネットワークを活かし、鮮度と品質にこだわった旬の野菜情報を発信しています。
飲食店や食品加工メーカー様の「美味しい野菜を安定して届けたい」という想いに応えるため、市場の相場情報や野菜の豆知識を、現場の視点からお届けします。




