カレー原価と食材高騰|コメ安でも下がらない理由と仕入れの見直し方
2026年10月25日
帝国データバンクが2026年10月に公表した調査によると、2026年8月のカレーライス物価は1食348円でした。コメ価格が落ち着いてきたにもかかわらず、予想より緩やかな下がり方にとどまっています。
結論から言うと、高止まりの主な理由は、費用の約半分を占める具材(肉と野菜)が、野菜の天候不順や輸入肉の円安の影響を受けていることです。ごはんの部分が下がっても、具材の上昇に打ち消されます。
数字は調査機関の試算にもとづくもので、月ごとに変わります。この記事では、指数の読み方、原価が動きにくい構造、肉と野菜の値動きを順に整理します。
そのうえで、業務用の野菜仕入れと原価管理で見直したい点まで扱います。
目次
カレーの原価はいまどの水準にあるのか
2026年10月公表の調査が伝えていること
カレーライス物価は、家庭でカレーを作るときの材料費と水道光熱費を、帝国データバンクが独自に試算した数字です。2026年8月の348円は前月の349円から1円下がっただけで、前回調査で予想されていた346円を2円上回りました。
コメ価格の下落が押し下げた一方で、天候不順による野菜価格の高止まりなどが下げ幅を抑えたとされています。コメ安の恩恵が、具材の値動きで目減りした形です。
定番のカレーを毎週のように出している店や施設では、こんな場面があるのではないでしょうか。コメの納品価格が落ち着いたと聞いて安心したのに、月末に原価表を開くと数字が思ったほど下がっていない。
この違和感の正体が、次の節からの中心です。
数年前と比べてどれだけ変わったか
費用の推移は、帝国データバンクのカレーライス物価指数で追えます。前年同月比で見ると、どの時期にコメが押し上げ、どの時期に肉や野菜が押し上げたのかが読み取れます。
ただし、この調査は2026年1月に対象や容量の一部を見直し、2015年分までさかのぼって数字を改定しています。改定前に公表された金額(たとえば2025年8月分の1食436円)と、改定後の金額をそのまま並べることはできません。
改定後の数字では、2026年1月に調査開始以降の最高値となる370円をつけ、その後は下がって8月が348円でした。9月は342円前後と予想されていますが、今後の焦点は野菜価格とされています。
比べるときは、同じ月の試算どうしを並べるのが基本です。野菜の相場は季節で変わるため、月の違う数字を並べると、実態以上に上がったようにも下がったようにも見えます。

カレーライス物価はどうやって計算しているのか
指数の前提を知らないまま数字だけを見ても、自店の感覚とずれる理由は分かりません。まず、何を数えている指数なのかをそろえます。
使われている食材と光熱費の範囲
対象は、ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、肉、コメ、カレールー、油、水道光熱費です。価格は、総務省の小売物価統計調査にある全国平均を参照して算出されています。
総務省統計局の小売物価統計調査は公的な統計で、店頭で売られている価格が基になっています。つまりカレーライス物価は、家庭が店先で払う価格の動きを映したものです。
家庭で6食分を作る想定とは
想定されているのは、市販のルーを半分使って6食分をまとめて作る家庭です。ビーフ、ポーク、チキン、シーフード、野菜の5メニューの平均として、1食あたりの費用を出しています。
大鍋でまとめて作る点は業務用に近く見えますが、数量も規格も家庭向けの小売が前提です。業務用の仕入れとは条件が異なり、この差は後ろの節で扱います。
コメが下がってもカレーの原価が下がりにくいのはなぜか

コメ価格の高騰と下落は、カレー物価を大きく動かした要因でした。ただ、コメが受け持つのはごはんの部分だけです。
具材が費用の約半分を占める構造
費用を大きく4つに分けると、次のようになります。
| 区分 | 含まれるもの | 動きに影響しやすい要因 |
|---|---|---|
| ごはん | コメ | コメ価格の上げ下げ |
| 具材 | 肉、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ | 天候、円安、海外相場 |
| ルー・油 | カレールー、食用油 | メーカーの価格改定 |
| 水道光熱費 | 水道、ガス、電気 | エネルギー価格 |
帝国データバンクの2025年の各月の調査では、具材(肉・野菜)が全体の約5割を占めるとされていました。
具材が半分近くを占めるなら、ごはんが下がっても、具材が上がればその分を打ち消されます。カレー原価率を考えるときは、コメ価格の次に肉と野菜の動きを見るのが実態に合います。
野菜の不作と輸入肉の値上がりが重なるとき
野菜は、猛暑、少雨、低温といった天候の影響を受けます。不作になればタマネギの価格が上がり、ジャガイモとニンジンの値上がりが同じ時期に重なることもあります。

玉ねぎは前の産地の貯蔵分が減る時期ほど、新しい産地の作柄が値段に出やすい
輸入牛肉や輸入豚肉は、円安と海外相場の影響を直接受けます。円安が進むと、同じ量を買うのに必要な円が増えるためです。
野菜と肉の値上がりが同じ時期に重なると、コメの下落分は小さく見えます。ニュースで見る高止まりは、この重なりを反映したものです。
ルーや油の価格改定も効いてくる
カレールーや食用油は、メーカーの価格改定で段階的に上がることがあります。1回の値上げ幅は小さくても、積み重なれば1食あたりの費用に表れます。
この部分は天候では動かず、いったん上がると戻りにくい性質があります。床が一段ずつ上がっていくような動き方で、具材やコメが落ち着いても総額が下がりにくい土台になりがちです。
肉の種類で原価の動き方はどう変わるのか
同じカレーでも、牛・豚・鶏の違いや、国産か輸入かによって、値上がりの受け方は違います。
| 区分 | 単価の傾向 | 値動きの受け方 |
|---|---|---|
| 国産肉 | 輸入肉より高い傾向 | 上昇率が相対的に小さかった時期がある |
| 輸入牛肉・輸入豚肉 | 国産肉より低い傾向 | 円安や海外相場の影響を受けやすい |
| 鶏肉 | 銘柄や部位で幅がある | 飼料と円安の影響が関わる |
2026年8月の調査では、前年同月と比べてシーフードカレーが6円、ビーフカレーが5円、ポークカレーが3円上がりました。一方、チキンカレーと野菜カレーは4円ずつ下がっています。
メニューごとの動きは公表のたびに変わるため、資料に使う場合は時点を添えてください。
単価が高くても上昇率が小さい選択肢
国産肉は単価こそ高いものの、輸入肉より上昇率が小さかった時期があります。2026年2月の調査では、国産ビーフカレーが596円(前年同月561円)、輸入ビーフカレーが348円(同312円)でした。
上がった金額はどちらも35円前後ですが、もとの単価が低い輸入のほうが上昇率は大きくなります。単価だけで選ぶと、いまは安く見えても、為替が動いたときに原価が急に膨らむことがあります。
判断軸は、いまの単価と、これまでの値動きの大きさの両方です。
鶏肉の値動きに飼料と円安が関わる理由
鶏は、飼料に使う穀物の多くを輸入に頼っています。そのため、飼料の価格や円安が鶏肉の値段にも回り込みます。
2026年8月の調査では、前年に高値が続いた鶏肉の供給回復が進み、チキンカレーは前年を下回りました。それでも、国産が中心だから鶏肉は為替と関係ない、とは言い切れません。
見積もりを受け取るときは、肉の種類ごとに何の影響を受けやすいかを頭に置いておくと、原価の変化を説明しやすくなります。
家庭の指数を業務用の原価にそのまま当てはめてよいのか
カレーライス物価の数字を自店の原価の目安にそのまま使うと、ずれが出ます。指数は、傾向をつかむ道具として使うのが適切です。
小売価格と業務用の仕入れ価格の違い
指数は、家庭向けの小売価格が土台です。業務用の仕入れ価格は商品・時期・数量などで異なり、店頭価格とは別の動きをすることがあります。
同じタマネギでも、小売の袋詰めと業務用の箱単位では、価格の決まり方が違います。ニュースの金額と自店の原価が合わないのは、珍しいことではありません。
規格・数量・時期・取引条件で変わる部分
業務用の野菜仕入れでは、規格の大きさ、数量、納品の頻度、取引条件で価格が変わります。指数が前年同月比で上がったと伝えていても、自店が使う規格や数量では、上がり方が大きかったり小さかったりします。
自店の数字は、自店の伝票で追うのが確実です。
下処理の手間やロスも原価に含めて考える
指数には、人件費や下処理の手間が入っていません。皮むきやカットの作業時間、使えない部分の廃棄は、帳票上の単価に表れにくい原価です。
1kgあたりの単価が安くても、皮を厚くむく必要があれば使える量は減ります。原価管理では、納品単価ではなく、実際に鍋に入る量で割った実質原価で比べると判断を誤りにくくなります。
皮むきの人件費や歩留まりの考え方は、むき玉ねぎの業務用仕入れの記事で詳しく整理しています。
カレーの野菜は産地と季節でどう値動きするのか
ここまでの数字は月ごとに変わる話でした。ここからは、半年後に読んでも変わらない、野菜の値段が動く仕組みを整理します。
タマネギは産地が切り替わる時期に注目する
タマネギは、収穫時期の違う産地が順に出荷を担うことで、1年を通した供給が成り立っています。主産地が北海道へ切り替わる時期は、前の産地の貯蔵分が減り、新しい産地の作柄が価格に直結する節目です。
天候による野菜の高値がカレーの費用を押し上げた時期は、これまでにもありました。タマネギ価格は切り替わりの前後で動きが変わりやすく、この点は年が変わっても同じです。
ジャガイモ・ニンジンと天候の関係
ジャガイモとニンジンも、猛暑や少雨の年は生育に影響が出て、値上がりにつながることがあります。ジャガイモは貯蔵して出荷することが多く、その年の作柄が翌春以降の供給にまで響きます。
1年のうち価格が落ち着きやすい時期については、じゃがいもが安い時期と価格推移で扱っています。
今後の値動きはどう見ればよいか
農産物は、作付けから収穫までに一定の期間が必要です。値段が上がってもすぐには生産量を増やせず、相場が短期間で戻りにくい性質があります。
この性質から、今後数カ月の価格を断定することはできません。見ておきたいのは、産地の切り替わりの時期、その年の天候、円相場の3点です。
この3点を押さえておけば、値動きの理由を説明しやすくなります。
食材高騰が続くなか、仕入れ担当者は何を見直すとよいか
値動きの大きい食材を把握しておく
コメ、野菜、肉を分けて、定期的に確認する習慣が土台になります。コメ価格が落ち着いても、野菜と肉が動いていれば原価は別の方向へ動きます。
食材ごとに先月と比べてどちらへ動いたかを記録しておくと、総額が変わった理由を説明できます。報告を受ける側にも納得してもらいやすくなります。
用途に合わせて規格や形状を相談する
同じ野菜でも、用途によって適した規格や形状は異なります。煮込み用なら大きさの幅に余裕があり、形がそろっていなくても困らない場合があります。
カット野菜のように使う形に近い状態で仕入れれば、下処理の手間と廃棄を減らせる場合があります。単価だけでなく、手間とロスを含めた実質原価で比べるのが、食材高騰の局面での考え方です。
価格は条件次第と考え、早めに仕入れ先と話す
価格やロットは商品・時期・数量によって異なり、希望条件を伝えたうえで相談して決まります。値動きが気になった段階で早めに話すほうが、選択肢が残ります。
必要な規格、1回あたりの数量、使う時期を整理して伝えると、相談がかみ合います。業務用の野菜仕入れは、価格を聞く前に条件をそろえるところから始まります。

よくある質問
コメの値段が下がったのに、カレーの原価が下がりにくいのはなぜですか?
費用の約半分を肉と野菜の具材が占めるためです。野菜の天候不順や輸入肉の円安の影響が残ると、コメの下落分を打ち消します。ルーや油の価格改定も重なります。
ニュースのカレー1食の金額は、飲食店の原価にもそのまま当てはまりますか?
そのままは当てはまりません。指数は、家庭で6食分を作る想定の小売価格が土台です。
業務用は規格・数量・時期・取引条件で変わり、人件費や下処理の手間も別にかかります。目安として使ってください。
カレーの原価に一番影響する野菜はどれですか?
時期によって変わります。帝国データバンクの調査では、2024年度に少雨や低温の影響でジャガイモやニンジンが値上がりしたことが挙げられています。産地が切り替わる時期と、その年の天候に注目すると、動きを先読みしやすくなります。
国産肉と輸入肉はどちらが原価を抑えやすいですか?
単価は国産のほうが高い傾向です。一方で、輸入肉のほうが円安や海外相場の影響で上昇率が大きかった時期があります。単価と値動きの両方で判断するのが基本です。
食材高騰が続くとき、仕入れで相談できることはありますか?
用途に合わせた規格や形状、必要な数量、使う時期について、仕入れ先と相談できます。価格は商品・時期・数量で異なるため、条件を伝えて確認してください。
あわせて読みたい
北のやさい便が選ばれる理由

カレーの原価は、コメの値段だけでは読みきれません。具材の産地が切り替わる時期、使う規格、1回の数量、下処理の手間まで含めて考えるほど、仕入れ先と話し合いたい点は増えていきます。
北海道産野菜を用途や規格から相談したい方へ
北のやさい便は、北海道産野菜を業務用に扱っています。タマネギ、ジャガイモ、ニンジンのようにカレーで使う量が多い野菜は、産地や季節によって状況が変わります。
そのため、用途に合わせて規格や形状を相談しながら決めていくのが基本です。取り扱いの考え方は、業務用野菜の卸売・産地直送の案内でも紹介しています。
カット野菜など、用途に応じた形状の相談もできます。下処理の時間やロスまで含めた実質原価で考えたい場合は、使い方を伝えていただくと話を進めやすくなります。
価格やロットは、商品・時期・数量などによって異なります。具体的な条件をうかがったうえで、相談しながら決める形になります。
業態に合わせた仕入れの相談
飲食店、ホテル、給食、食品加工など、業態によって必要な量や納品の形は違います。日々のメニューと照らして無理のない仕入れ方を一緒に考えることが、原価のぶれを抑える土台になります。
相場が急に動いてから慌てても、打てる手は限られます。値動きが比較的落ち着いているうちに規格や数量の選択肢を整理しておくことも、食材高騰に備えるリスク管理のひとつです。
業務用の仕入れについて相談したい方や、必要な規格や数量について問い合わせたい方は、まず現在お困りの点をお知らせください。用途に合った仕入れの形を一緒に考えていきます。
「北のやさい便」は、北海道産野菜の卸売・仕入れのスペシャリスト集団です。
札幌中央卸売市場をはじめ、北海道の真狩村をはじめ、全国の農家さんとの独自のネットワークを活かし、鮮度と品質にこだわった旬の野菜情報を発信しています。
飲食店や食品加工メーカー様の「美味しい野菜を安定して届けたい」という想いに応えるため、市場の相場情報や野菜の豆知識を、現場の視点からお届けします。




